事例紹介

相続賃貸経営

「アパートを建てて、相続税対策!」を成功させるには?

「相続税対策のために、アパート建築」相続税対策としても、子世代に資産を遺す方法としても有効です。しかし、アパートは建てるところからが経営のスタート。その後の事業性をしっかり見極めることが不可欠です。弊社でアパートプランの選定をサポートした事例をご紹介します。

子どもたちへの負担を減らし、活きた資産を遺したい

ご相談者のDさん(70代・男性)は、Dさんの父(以下:父)が所有する土地でアパート建築を計画しています。父名義の土地は複数あり、将来父の相続が発生すると多額の相続税を負担することになりそうです。幸い、手持ちの資産で納税できそうですが、同様の負担を次の代の相続で子供に負わせないようにしたいと子世代に向けた相続対策を考えていたときに、あるメーカーからアパート建築をすすめられ、アパート経営に興味を持ちました。

活用せずに所有している土地にアパートを建てれば、相続資産から建築にかかる費用(ローン)が差し引かれ、相続資産を縮小でき節税が見込めます。さらに、アパートから得られる将来の収益も含めて子供に遺すことができます。土地を活用していないにも拘わらず固定資産税だけを負担し続けていることも気になっていましたし、アパート建築を前向きに検討することにしました。

しかし、Dさんにはアパート建築・経営の経験はなく、メーカーからの提案に頼りきりになります。その状況に、ご家族が不安を感じていたこともあり、Dさんの税理士から「不動産に詳しい第三者の意見も聞いた方がいいのでは?」とすすめられ、弊社が紹介されました。

複数のアパートプランから最適解を導く

Dさんとの面談で、アパート建築を考えるに至った経緯を伺い、ご所有の土地の調査や資産分析等をひととおり行いました。弊社の見解としても、アパート建築自体はDさんにとってメリットが大きいと判断しました。しかし、メーカーから提案されているプランは、せっかくの好立地を生かしているとはいえず、事業性の乏しいものでした。

そこで、Dさんとメーカーの打ち合わせに弊社が同席し、土地等の調査結果を踏まえたプランの再考・改善を求めました。さらに、他のアパートメーカーにもコンペの企画を呼びかけ、当初から提案を受けていた1社を含め、6社によるアパートプランのコンペを実施しました。一口にアパートと言っても、構造(木造・鉄骨造)、入居者タイプ(一人暮らし・ファミリー)、コンセプト、設備など、様々です。各社から、地域の需要や自社の強みを反映したプランが集まりました。

プランを比較するにあたって、難しい点があります。各社のプランには資金計画表や収支予測などが提示されていますが、それぞれ指標が異なっており、プランを縦断して比較することは容易ではありません。例えば構造が違うために減価償却の期間が異なるプラン同士の比較や、長期修繕・将来的に事業を売却する可能性等、将来の不確定な要素も含んで検討する必要もあります。そこで、弊社では、各社プランの指標を揃えて比較しやすくした独自の比較表を作成、利回りやローン返済比率、他物件との競争力等、多面的に評価を行いました。

プラン決定の段階では、次世代にわたって長く事業を続けたい意向があったため、短期間での売却はせずに事業を継続することを想定した「総事業手残り額(※注)」を重視しました。さらに、募集コストや空室リスクを避ける事にもつながるよう、長期入居が望める明確なコンセプトがあるプランを提案したメーカーで、アパート建築をすすめることに決めました。

(※注)総事業手残り額:アパート事業を行う全期間(構造やメーカーにより異なる)の収支を基に、事業終了時に手元に残る金額を算出します。

建てたら終わり、にしない継続サポート

当初提案されていたのはベーシックないわゆる「アパート」でしたが、「マンション」をイメージさせる高級感のある建物と入居者ニーズ・競争力の高いコンセプトを備えたプランに決まり、現在、詳細な打ち合わせを重ねながら順調に建築計画が進んでいます。Dさんは、「建築費は当初より上がりましたが、地域の特性・需要を示してもらい、また、複数のメーカーを比較できたことにより、理想とするアパートが明確になりました。設備やデザインの決定も単なる好みでなく、根拠を持って判断できていると思います」とおっしゃっています。

さらに、父名義のこのアパート用地が、将来相続が発生しても相続人(Dさんの兄弟)の間でもめることなく、確実にDさんが相続できるよう、父親の遺言書作成もサポートしました。

「相続税対策のために、アパート建築」、これは有効な方法です。しかし、アパート建築は経営のスタート地点。その後、長きにわたって安定した経営を続けられるかどうかを、事業性や相続など多角的な観点からよく見極めてスタートすることが重要です。節税ができたとしても、後々、空室に悩まされたり、経営が赤字となったりと、負の遺産を遺すことになっては元も子もありません。「アパートを建てませんか?」と営業を受けた、というお客様のご相談に対し、不動産コンサルティングを行う弊社では、プランの内容や資産状況、家族構成、後継者の考えなどを踏まえて「今は、やめておきましょう」とお伝えするケースもあります。

長期的な分析をしているとはいえ、将来的な予測を100%確実に行うことはできません。今後も半年ごとにDさんのアパートの進捗や経営状況をチェックし、フォロー・サポートを継続する予定です。Dさんには「アパートを遺すことが、かえって将来的に子どもたちの負担になってしまったらという心配もあったが、完成後も継続してアパート経営をサポートしてもらえると聞いて安心しました。」とご満足いただいています。